結論ファースト(TL;DR)
- 戦略の損益はドル建て=実力は円相場に依存しない。問題は別レイヤーの通貨リスク。
- 静的ヘッジの要否は完全に局面依存=USD/JPYの方向性ベット。円高ならフルヘッジ勝ち、円安なら無ヘッジ勝ち。
- トレンド連動の動的ヘッジは却下。円高でウィップソー破綻(Sharpe 0.09・最大DD −36%)。
- 方向を読めない前提なら、50%固定ヘッジが後悔最小(どちらに転んでも大負けしない)。
米国ETFを円で買う投資家には、戦略の良し悪しとは別に、必ず「為替」という二つ目の問題が乗ります。ドルが上がるか下がるか。これを当てにいくべきか、消すべきか——検証の結論は、拍子抜けするほど慎ましいものでした。
まず切り分ける:戦略 ≠ 為替
大前提として、本研究の戦略損益は米国ETFのドル建てリターンで計算しています。つまり戦略の実力(Sharpe・暴落耐性)は円相場に一切依存しません。為替が動かすのは「円換算した見出しの金額」だけ。だからこそ通貨は、戦略本体から切り離して別に方針を決めるべきレイヤーなのです。
静的ヘッジ=方向性ベットだった
「常にフルヘッジ」「常に無ヘッジ」といった静的な選択は、一見すると中立に見えて、実は相場局面に完全に依存します。コストは日米金利差(実データ)。
| 局面 | 無ヘッジ | フルヘッジ | 勝者 |
|---|---|---|---|
| 2008–12(円高・金利差0.43%) | 0.25 | 0.62 | フルヘッジ |
| 2020–(円安・金利差2.71%) | 0.99 | 0.46 | 無ヘッジ |
出典:docs/hedge_sweep_result.md ほか。金利差はFREDの実データ。
つまり「フルヘッジか無ヘッジか」を選ぶことは、そのまま「これから円高か円安か」を当てにいくこと。フルヘッジも無料ではなく、円安期はキャリー収益を放棄して純戦略Sharpeが0.70→0.46へ低下します。
動的ヘッジは却下した
「ならトレンドに合わせて、円高のときだけヘッジすれば?」——これは自然な発想で、実際に試しました。戦略本体と同じ3/6/12ヶ月トレンドでUSD/JPYを判定し、円高方向だけヘッジをかける方式です。
結果は破綻。 円安局面では機能(Sharpe 0.89)したものの、円高局面ではウィップソー(往復の振り回し)で崩壊し、Sharpe 0.09・最大DD −36%——すべての静的案より悪い成績に。為替1本のトレンドフォローは脆く、ここでも「単一サンプルなら勝ちに見えるが、別レジームで蜃気楼が剥げる」という本研究の通底パターンが再現しました。今後「ヘッジを動的にすれば?」と再提案されても、同じ轍は踏みません。
結論:50%固定 = 後悔最小
方向を読めないと認めるなら、後悔が小さいのは「どちらに転んでも大負けしない」選択です。本検証の2局面では、50%固定ヘッジは円高でも無ヘッジより良く(0.45 > 0.25)、円安でもフルヘッジより良い(0.81 > 0.46)。最大化はしないが、最大の後悔を避ける。これは、方向を読まない前提での後悔最小(ミニマックス)の妥協案でした。
もちろん明確な相場観があるなら、無ヘッジ(円安に賭ける)やフル寄り(円高に備える)に傾けてよい。ただし「タイミングを取りにいく」のではなく、あくまで固定比率の調整として。タイミングは取らない——それが規律です。
よくある質問(FAQ)
米国ETFを買うとき為替ヘッジはすべき?
要否は局面に完全依存し、本質はUSD/JPYの方向性ベットです。円高ならフルヘッジ、円安なら無ヘッジが勝ち。方向を読めない前提なら、50%固定が最も後悔の小さい選択でした。
トレンドに合わせた動的ヘッジは有効?
却下しました。円安では機能(0.89)しても円高でウィップソー破綻し、Sharpe0.09・最大DD−36%とすべての静的案より悪化。為替1本のトレンドフォローは脆いためです。
戦略の成績は円高・円安に左右される?
戦略はドル建てで計算しており、実力は円相場に依存しません。左右されるのは円換算した見出し金額だけです。だから通貨は本体と切り離して方針を決めます。