結論ファースト(TL;DR)
- SBI・楽天の米国株信用は約2倍止まり。商品・通貨・REIT ETFは信用対象外=分散の要にレバが乗らない。
- 買方金利(r_usd+3.5%)を正直に引くと、信用2倍 Sharpe 0.66 < 現物のみ 0.67。レバは効率をむしろ悪化させた。
- レバが報われるのは調達が無リスク金利で済む先物だけ(0.69)。だが個人にはアクセスの壁。
- 結論:確定スペックを「レバ込3倍」→「現物のみ(借入なし)」へ格下げ。追証なし・運用最単純・分散は温存。
当初の設計は「全資産に最大3倍のレバレッジ」でした。リターンを底上げできるはず——そう信じていました。ところが、ブローカーの現実と借入コストを反映して再計測すると、その前提は静かに崩れました。これは「コストを正直に引くと、結論が反転する」典型例です。
まず、口座の現実
個人がSBI証券・楽天証券で使える米国株の信用取引は、レバレッジ約2倍が上限です。さらに重大なのは、ポートフォリオの分散を支えるコモディティ(DBC/USO)・通貨(FXE/FXY)・REIT(VNQ)のETFは、そもそも信用取引の対象外だということ。つまり「全資産3倍」という当初スペックは、口座の制約上そもそも実現不可能でした。
借入コストを引いて再計測する
そこで、CTAスリーブのレバ層だけを差し替え(一度に1変数)、借入コストを控除して4つの実現形を比較しました。検証窓は2008–2024、レバ差分の検証用に当時の構成(SPY50:CTA50・50%ヘッジ・現物。※採用案は後に30:70へ更新)、初期¥500万。
| 実現形 | 最終評価額 | 年率 | 最大DD | Sharpe |
|---|---|---|---|---|
| C 先物相当2倍(調達≒無リスク金利) | ¥2,217万 | 9.1% | −28.4% | 0.69 |
| B 信用2倍(SBI買方金利 r_usd+3.5%) | ¥2,087万 | 8.7% | −28.4% | 0.66 |
| A 現物のみ(借入なし・≤100%) | ¥2,052万 | 8.6% | −28.5% | 0.67 |
借入額(グロス−100%)×(r_usd+スプレッド)を控除。出典:docs/leverage_forms_result.md(run_leverage_forms.py)。
3つの読み取り
- SBIで使えるレバ(B)は現物(A)に勝たない。 買方金利を払うと B=Sharpe 0.66 < A=0.67。17年での終価差はわずか¥35万で、しかも効率(Sharpe)はむしろ悪化。レバの増益を、調達コストとリスク増がきれいに相殺しました。
- レバが報われるのは先物(C)だけ。 調達がほぼ無リスク金利で済むため0.69。ただし先物は別口座・夜間運用・個人のクロスアセット先物アクセスの壁で、実務ハードルが高い。
- 最大DDは全形ほぼ不変(−28%台)。 DDは株コアとヘッジが支配し、CTAのレバ差では動かない。レバはDDを増やさない代わりに、コスト後は報酬も増やさない。
「コストを正直に引くと、判断が反転する」。 額面のリターンだけ見れば、レバは魅力的に映ります。しかし買方金利という現実の摩擦を計上した瞬間、その魅力は消えました。これは為替ヘッジ(レポート05)やリバランス頻度の検証でも繰り返し現れた、本研究の通底テーマです。
確定:現物のみへ格下げ
結論として、確定スペックを「レバ込3倍」から「現物のみ(グロス≤100%・借入なし)」へ格下げしました。失うのは(実現不可能なBaseline比で)年率0.7%だけ。代わりに得るのは——株側に追証リスクなし・信用取引の複雑さを回避・運用が最も単純(ただし50%為替ヘッジのFXは申告分離課税で、株式等と損益通算できない点の確認は残ります)。そして12資産フル分散という肝心の部分は、そのまま温存されます。ブローカーはNISA対応・予約注文・リアルタイム為替に優れるSBI証券に確定しました。
よくある質問(FAQ)
個人にレバレッジは有効?
本検証では、SBIで実現できる信用2倍(買方金利控除後)のSharpeは0.66で、現物のみ0.67に勝てませんでした。レバの増益を調達コストとリスク増が相殺します。報われるのは先物だけですが、個人にはアクセスの壁があります。
なぜDDはレバをかけても変わらない?
本構成のDDは株コアと為替ヘッジが支配するためです。CTAのレバ差では全体のDDが動かず、各形で−28%台でほぼ一定でした。
SBIで信用取引できないものは?
米国株信用は約2倍が上限で、コモディティ・通貨・REITのETFは信用対象外です。分散の要にレバが乗らないため、優位はさらに縮みます。