結論ファースト(TL;DR)

当初の設計は「全資産に最大3倍のレバレッジ」でした。リターンを底上げできるはず——そう信じていました。ところが、ブローカーの現実と借入コストを反映して再計測すると、その前提は静かに崩れました。これは「コストを正直に引くと、結論が反転する」典型例です。

まず、口座の現実

個人がSBI証券・楽天証券で使える米国株の信用取引は、レバレッジ約2倍が上限です。さらに重大なのは、ポートフォリオの分散を支えるコモディティ(DBC/USO)・通貨(FXE/FXY)・REIT(VNQ)のETFは、そもそも信用取引の対象外だということ。つまり「全資産3倍」という当初スペックは、口座の制約上そもそも実現不可能でした。

借入コストを引いて再計測する

そこで、CTAスリーブのレバ層だけを差し替え(一度に1変数)、借入コストを控除して4つの実現形を比較しました。検証窓は2008–2024、レバ差分の検証用に当時の構成(SPY50:CTA50・50%ヘッジ・現物。※採用案は後に30:70へ更新)、初期¥500万。

実現形最終評価額年率最大DDSharpe
C 先物相当2倍(調達≒無リスク金利)¥2,217万9.1%−28.4%0.69
B 信用2倍(SBI買方金利 r_usd+3.5%)¥2,087万8.7%−28.4%0.66
A 現物のみ(借入なし・≤100%)¥2,052万8.6%−28.5%0.67

借入額(グロス−100%)×(r_usd+スプレッド)を控除。出典:docs/leverage_forms_result.md(run_leverage_forms.py)。

3つの読み取り

「コストを正直に引くと、判断が反転する」。 額面のリターンだけ見れば、レバは魅力的に映ります。しかし買方金利という現実の摩擦を計上した瞬間、その魅力は消えました。これは為替ヘッジ(レポート05)やリバランス頻度の検証でも繰り返し現れた、本研究の通底テーマです。

確定:現物のみへ格下げ

結論として、確定スペックを「レバ込3倍」から「現物のみ(グロス≤100%・借入なし)」へ格下げしました。失うのは(実現不可能なBaseline比で)年率0.7%だけ。代わりに得るのは——株側に追証リスクなし・信用取引の複雑さを回避・運用が最も単純(ただし50%為替ヘッジのFXは申告分離課税で、株式等と損益通算できない点の確認は残ります)。そして12資産フル分散という肝心の部分は、そのまま温存されます。ブローカーはNISA対応・予約注文・リアルタイム為替に優れるSBI証券に確定しました。

よくある質問(FAQ)

個人にレバレッジは有効?

本検証では、SBIで実現できる信用2倍(買方金利控除後)のSharpeは0.66で、現物のみ0.67に勝てませんでした。レバの増益を調達コストとリスク増が相殺します。報われるのは先物だけですが、個人にはアクセスの壁があります。

なぜDDはレバをかけても変わらない?

本構成のDDは株コアと為替ヘッジが支配するためです。CTAのレバ差では全体のDDが動かず、各形で−28%台でほぼ一定でした。

SBIで信用取引できないものは?

米国株信用は約2倍が上限で、コモディティ・通貨・REITのETFは信用対象外です。分散の要にレバが乗らないため、優位はさらに縮みます。