結論ファースト(TL;DR)
- 検証で見つけたCTA戦略を、毎週・感情を挟まず・同じルールで回すために、運用システムをAWSにデプロイした。
- 構成はサーバーレス(常時動くサーバーなし)。毎週月曜の朝、自動で目標建玉を計算し、発注内容をメールで届く。
- 主役は EventBridge(目覚まし)+Lambda(頭脳)+DynamoDB(記録)+SES(メール)。コードは一行も手書きしていない。
- 待機コストゼロなので、運用費は月額わずか数十円。いまは paper(試運転)モードで安全に検証中。
ここまでの7本は「どんな戦略が本物か」を突き止める話でした。でも、戦略は見つけただけでは1円も生みません。毎週、淡々と、同じルールで実行し続けて初めて意味を持ちます。最後のレポートは、その「淡々と続ける」を人間の根気ではなく仕組みに任せた話です。そしてこの仕組みも、私はコードを一行も書かずに用意しました。
なぜ「仕組み」にするのか
戦略の最大の敵は、実は相場ではなく人間の手作業と感情です。「今週は忙しくて発注を忘れた」「暴落して怖いから今週はやめておこう」——こうした“例外”が、検証で確認したエッジを静かに壊します。REPORT 07で書いた規律を、運用でも守り切るには、判断の入る余地を減らすのが一番です。
そこでAIエージェントにこう頼みました——「毎週決まった時刻に、今週の目標建玉を自動で計算して、発注内容をメールで送ってくれる仕組みを、なるべく安く・手間なく作りたい」。返ってきた答えが、次のサーバーレス構成です。
「サーバーレス」をひと言で。 常時動くサーバーを持たず、必要な瞬間だけ起動して、終わったら消える方式です。この運用は週1回・数十秒しか計算しません。常時稼働サーバーは“待っている間”にも料金がかかりますが、サーバーレスなら動いた分だけ課金。週次の用途には完璧にハマり、費用が劇的に下がります。
実際の構成(毎週月曜の自動運転)
登場人物を、役割で読み替えるとこうなります。実際にAWS上で動いている構成です。
毎週月曜 07:00(日本時間)に自動で起動し、次の「頭脳」を叩き起こします。人間が押すボタンはありません。
呼ばれた時だけ目を覚ますサーバーレスの計算機。市場データを取り込み、3/6/12ヶ月のトレンド+逆ボラ+ボラ目標で「今週の目標建玉」を算出します。普段は眠っていて、起きるのは数十秒だけ=待機コストゼロ。
建玉・評価額(NAV)・約定の記録を保存する台帳。使った分だけ課金される設定(オンデマンド)で、個人利用ならほぼ無料です。
計算結果=「今週はこの銘柄をこれだけ」という発注内容を、あなたのメールに届けます。あなたは中身を見て、SBI証券で現物を発注するだけ。
約定の記録、ポートフォリオの確認、手動実行などを行う簡易画面。パスワード+署名付きCookieで保護し、本人だけが開けるようにしています。
外部APIキー・ログインパスワード・署名鍵などの秘密情報を、コードに直書きせず暗号化して別保管。安全性の要です。
流れをひと言で:月曜7時に目覚まし → 頭脳が起きて計算 → ノートに記録 → メールで通知 → 人間はSBIで現物発注。計算と通知は完全自動で、最後の発注だけ人間が行います(証券会社の制約と、最終確認という安全弁のため)。
いまは「試運転(paper)」モード
正直にお伝えすると、これはまだ実弾ではありません。システムには paper(フォワードテスト)と live(実弾)の2モードがあり、現在は paper で安全に試運転中です。数ヶ月、実際の約定やスリッページ、週次運用の手触りを確かめてから、問題なければ live に切り替えて改めて稼働させます。REPORT 06で挙げた「実弾前ゲート」を、仕組みの上でも踏んでいる段階です。
気になる運用コスト
常時稼働サーバーを持たないため、ここでも費用は拍子抜けするほど安く済みます。下が、この運用システムのおおよその月額です。
| サービス | 役割 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| Lambda(頭脳・UI) | 週次の計算+画面 | 無料枠内=ほぼ ¥0 |
| DynamoDB | 記録ノート | 無料枠内=ほぼ ¥0 |
| EventBridge Scheduler | 週次の目覚まし | ほぼ ¥0 |
| SES | メール送信(月数通) | ほぼ ¥0 |
| SSM パラメータストア | 秘密情報の保管 | ¥0 |
| ECR | 計算プログラム(Dockerイメージ)の保管 | 約 ¥20〜30 |
| 合計 | — | 月 数十円(実質ほぼ無料) |
個人が週1回動かす前提の概算。週次・数十秒のみ起動するサーバーレス構成のため、待機コストはかかりません。市場データを取得する外部API(Tiingo等)の料金はAWSとは別です。為替は約¥155/$で換算。
非エンジニアでも、ここまで作れた
「戦略の自動売買システムを作る」と聞くと、専門のエンジニアチームが要りそうに思えます。実際にやったのは、AIエージェントとの対話だけでした。
- 設計:目的(週次・安く・手間なく・安全)を伝えると、サーバーレス構成を提案し、なぜそれが最適かを噛み砕いて説明してくれた。
- 実装:計算ロジック、インフラ定義(どのサービスをどう繋ぐか)、秘密情報の暗号化やパスワード保護まで生成してくれた。
- 運用:デプロイやモード切替(paper/live)の手順を提示し、エラーが出れば一緒に原因を切り分けてくれた。
人間に残る仕事は、「何を実現したいか」を決め、提案を理解して承認し、試運転を見守ること。検証パートとまったく同じ構図です。AIが規律と作業を担い、人間は判断に集中する——専門家でない一人の人間でも、AIを相棒にすれば、戦略の発見から“毎週自動で回る仕組み”まで到達できる。検証で終わらせないことこそ、この旅の締めくくりでした。
よくある質問(FAQ)
戦略を見つけたあと、なぜAWSにシステムを作るの?
戦略は毎週・感情を挟まず同じルールで実行して初めて意味を持つからです。手作業は忘れや迷いが混じります。毎週決まった時刻に目標建玉を自動計算しメールで届ける仕組みにし、人間は届いた内容を発注するだけにしました。
サーバーレスはなぜ安い?
常時動くサーバーを持たず、必要な瞬間だけ起動して終わったら消える方式だからです。週1回・数十秒しか動かないため、待機中の費用がかからず、月額数十円まで下がります。
毎月いくら?
個人が週1回動かす前提で、主要サービスはほぼ無料枠に収まり実費は月数十円程度。主な費用は計算プログラム(Dockerイメージ)の保管料です。外部の市場データAPI料金はAWSとは別です。
コードを書けなくても作れる?
作れます。本システムも筆者はコードを一行も書かず、AIに設計・実装・インフラ定義・デプロイ手順まで任せました。現在はpaper(試運転)モードで安全に検証中で、人間の役割は方針決定と承認です。