結論ファースト(TL;DR)

第1幕で8戦略すべてが沈んだあと、問いを変えました。「どの指標が勝つか」ではなく、「プロのシステムトレーダーは、そもそも何をしているのか」。答えは拍子抜けするほど地味で、そして本質的でした。

プロが見ている方向

調べて分かったのは、勝っている運用者は魔法の指標を持っているわけではない、ということ。彼らの強さは3点に集約されます。

そこで、これを最小構成で再現しました。シグナルは 63 / 126 / 252日のトレンド符号の平均(=複数の時間軸のアンサンブル)という、ごく単純なもの。逆ボラ加重で各ETFを重み付けし、ポートフォリオの目標年率ボラを10%に調整しただけです。

結果:分散がエッジを生んだ

0.64全クロスアセット Sharpe
−0.09SPYとの日次相関
−21.5%最大ドローダウン
構成市場数Sharpe年率最大DDSPY相関
全クロスアセット290.646.9%−21.5%−0.09
FXのみ60.313.4%−19.3%
株のみ80.242.7%−25.5%

単一クラスSharpe:株0.24/債券0.45/商品0.58/通貨0.31/不動産0.25。出典:docs/cta_result.md。

注目すべきは、どの単一クラスも0.24〜0.58なのに、29市場を束ねると0.64と全部品を上回ったこと。同じ「トレンド」という単純なシグナルでも、枠組み(分散とサイジング)を変えるだけで別物になりました。第1幕の負けの原因は「シグナル」ではなく「枠組み」だった——これが実証されたのです。

危機で稼ぐ「クライシス・アルファ」

このモデルの真価は、サブ期間の成績に表れます。株が暴落した局面でこそ、トレンドフォローは下落方向に乗って稼ぎます。

期間Sharpe相場環境
2008–09+0.70世界金融危機
2020+1.52COVIDショック
2022+1.13利上げ局面
2023–24−0.25方向感のない年

単一の「JPY安」局面に依存していた第1幕の戦略とは対照的に、複数のレジームを横断して生き残る。これが頑健性の証拠です。

独立検証(7つの攻撃)を通過

陽性結果ほど疑う——別のAIエージェントに、このモデルを破壊する7つの攻撃を試させました。

判定は ROBUST-EDGE(条件付き)。本プロジェクトで初めて、監査を通過した頑健な系統的エッジでした。

唯一の弱点=コスト感応度。 日次リバランスは回転が高く、片道10bpsで死にます(Sharpe−0.05)。そこで週次リバランスに落とすと回転が半減し頑健に。現実配備版=週次・片道5bps:Sharpe 0.50/年率5.5%/最大DD −19.2%。実際のCTAファンド並みの、株と無相関な配備可能級リターンです。

正直な期待値

見出しの0.64は理想値(日次・低コスト)です。現実配備版は0.50、さらに「何回も試した」ことを統計的に割り引くと、期待Sharpeは0.3〜0.4が妥当。地味ですが、株と無相関で危機に強い分散資産として、一定の価値があると考えられます。その「割り引き」をどう計算したかは、次のレポートで。

よくある質問(FAQ)

CTA(マネージド・フューチャーズ)とは?

株・債券・商品・通貨など多数の市場でトレンドフォローを行う運用スタイルです。本研究では『多市場分散×ボラ・ターゲティング』を最小構成で再現しました。

なぜ0.31が0.64に上がるの?

分散効果です。単一クラスはどれも0.24〜0.58ですが、相関の低い29市場を束ねると部品の最大を超える0.64に。『分散は唯一のフリーランチ』の定量再現です。

現実に運用するとどのくらい?

週次・片道5bpsの配備版でSharpe約0.50(年率5.5%・最大DD−19%)。試行回数を割り引くと期待値は0.3〜0.4が妥当です。